生活保護制度②

生活保護制度の基本原理の一つに、国家責任による最低生活保障の原理がありました。その他にも、保護請求権無差別平等の原理があります。過去の救護法などでは、素行が悪く、働かずに怠ける人は保護しないとされていました。これに対し現在の生活保護法は、「すべて国民は、この法律の要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができる」と規定しています。生活困窮に陥った原因は一切問うことなく、経済状態だけで判断するとしています。

生活保護法は、行政側だけに責任や義務を課したものではなく、国民の側にも保護を受けるために守るべき最低限の要件を規定しています。それが保護の補足性の原理です。生活保護法第4条に「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限の生活の維持のために活用することを要件とし、また、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行わなければならない」と規定しています。生活保護にかかる費用は国民の税金を財源としていることから、各自のもてる能力に応じた最善の努力を優先させました。例えば、不動産を所有していれば、まずはそれを売却して生活費に充てなければいけない場合が考えられます。自動車は保有は認められていませんが、原則と例外はあります。働くことが可能なのに働こうとしない人は、保護を受けることはできません。他の制度によって安定した生活を送ることができるときは、他の制度の活用が優先されます。民法に規定する扶養義務者の扶養義務は生活保護に優先されます。保護の申請をしたら、扶養義務者に行政から連絡が行くのはこのためです。扶養義務者は以下の通りです。

◯夫婦間及び親の未成熟の子に対する関係

◯直系血族及び兄弟姉妹

◯三親等内の親族のうち特別な事情がある者

行政の扶養照会は上記全ての人に一律で行っているのではなく、一般的に扶養可能性が高い人に対して重点的に行われています。